アルツハイマー病国際会議

グループホーム・アショカ グループホーム・ルンビニー 施設長 相原あや子

 「高齢化社会における痴呆ケア」というメインテーマのもと、京都市で平成16年10月15日から17日までの3日間にわたり国際アルツハイマー病協会第20回国際会議が開催され、私も参加しました。会議には患者や家族、研究者、介護関係者など、世界66カ国から約4千人が参加し、会場の国立京都国際会館は連日活気に満ち溢れていました。

  会議では、痴呆のある人が世界に2440万人で、2040年には8200万人に増えるという予測や、3分の2が発展途上国に住んでいる実態を踏まえ、痴呆への理解の違いに応じた対策の必要性が述べられていました。また、早期発見のため、医師に対する研修や社会への啓発活動などに向けて取り組むことも講演等で強調していました。

  今回の会議の最大の特徴は、何といってもこれまで介護者側からしか語られなかった痴呆ケアや偏見をなくす取り組みの必要性を、患者自らが語ったところにあると思います。その理由として、言葉や意思がはっきりしている段階で痴呆と早期診断されるケースが増えたこと、そして、薬の開発が進み、痴呆の進行を遅らせることが可能になったことが考えられます。ケアのあり方も見直され、本人の意思を尊重するにはどうすればいいかが焦点となっています。

  福岡県の越智俊二さん(57歳)は、国際会議では日本人として初めて実名を名乗り痴呆の体験を語られました。「建築関係の仕事をしていた。47歳頃から物忘れが始まり、仕事場への道で迷ったり、仕事の手順を間違えたりするようになって仕事をやめた。自分が自分でなくなるのではという不安で、心から笑えなくなった。妻は『生活のことは考えんでいいから。私が働きます。』と言ってくれた。良い薬ができてこの病気が治ったら働きたい。妻に今までの苦労のお返しをしたい。子供にはお父さんのことは気にしないで、友達と遊んでほしい。」 越智さんのメッセージが終わると、会場からの拍手はしばらく鳴り止みませんでした。「病気が治って働きたい。」・・・越智さんの心の内に触れ、私も胸に熱いものがこみ上げてきました。

  オーストラリアのクリスティーンブライデンさんがコーディネーターをされたワークショップ「痴呆の人に関わる」でも、各国から痴呆の人の内面を知ることがケアのスタートという視点から発表がありました。イギリスでは、全英的な痴呆症の人の集まりに60名の参加があり、今望むことは何かを投票という形で問うてみて、下記の4項目の望みが多かったと報告されました。

  • 介護を受けるだけでなく人の役に立ちたい。
  • 自分のことは自分で決断したい。
  • 一般の人に痴呆の啓蒙をして、偏見をなくしたい。
  • 治療法が進んで、頭の中がスッキリする薬がほしい。
 カナダから参加したアルツハイマー病患者の方の発表です。「アルツハイマー病は見えない病気。『あなたお元気そうね。』と声かけられると、”解かってもらえない”という気持ちになる。もし我々が車椅子や白い杖を持っていれば、すぐ他の人は気づいてくれるのに。私は身だしなみを整え小ぎれいな人だったが、それが落ちていく。その事は世界的な問題ではないが、私個人の重大な問題なのです。私はこんなふうに言ってほしい。『お気の毒ですね。でもお元気そうに見えますね。何かお困りのことはないですか?何かお役に立てればと思うのです。』 介護者は時には我々が痴呆ということを忘れる。『どうして・・・なの!』としかる。我々は忘れる病気を持っているんだということを忘れないで!」

  以上、多彩なプログラムの中から特に痴呆の方の声を皆さんにお伝えしたく記しました。「心に寄り添ったケア」を実践するには、この人の心を知ろうという作業がスタートです。想いを語ってくれる人はまだしも、現実には語ることが困難な方が多く、心を読み取るには時間と努力を要します。私どものグループホームも”一人一人の心を読み取り支援につなげる”ことを支援の方向性に掲げています。今回の国際会議参加を機に、ルンビニーとアショカが入居者の方々にとって、より心豊かな生活空間となるようスタッフ一同取り組んでいきたいと考えます。
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