スピリチュアルケアの実践 −仏教と医療の融合−

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

 来る12月3日、4日、日本人体科学会15回大会が、愛媛大学を会場として開催されます。愛媛大学法文学部教授・黒木幹夫準備委員長らが企画し、大会のテーマは「スピリチュアリティと倫理」、現在鋭意準備が進められています。

  この大会で講演の機会を与えられました。講演では下記のごとく、「愛媛・仏教と医療を考える会」の13年の歩み、そのボランティアを得て、医療法人ビハーラ藤原胃腸科での医療、福祉の場への仏教的癒し導入の試みを話して、出席者たちのご意見やご教示をいただきたいと考えています。

  今、医療、福祉の場でスピリチュアルケアの必要性が言われている。スピリチュアルケアの実施に当たっては、宗教、とりわけ私たちの国では、長い歴史と文化の中で、生や死と関わってきた仏教者たちの参画が望まれる。
  医療法人ビハーラ藤原胃腸科では10余年来、「愛媛・仏教と医療を考える会」 のボランティアを得て医療、福祉の場への仏教的癒し導入を試みている。


愛媛・仏教と医療を考える会

 「愛媛・仏教と医療を考える会」は、医療、福祉の場に仏教的癒しを導入する目的で、1992年4月に発足した。2005年8月現在の会員数は224人(僧侶、教育者、医師、コメディカル、家庭の主婦など)である。主な活動は、医療、仏教を学ぶ例会(年5回)、公開講演会(年1回)、会報の発刊などで、実践活動として、施設法話、がん患者と家族の会(「アショカの会」)、病院、老人施設におけるさまざまなボランティア活動などである。

診療所のビハーラ活動

  医療法人ビハーラ藤原胃腸科では、「愛媛・仏教と医療を考える会」のボランティアを得て、医療の場への仏教的癒しを導入している。診療所の3階は13坪ほどの和室で、薬師如来と日光菩薩、月光菩薩の脇仏を祀った仏間になっている。この部屋で、患者たちを対象に月1回の法話会を開催している。僧侶の法話に続いてボランティアたちによる歌、踊り、ゲームなどの余興も組み込み、12年が経過した今、患者たちや近隣の人たちがこの法話会を楽しみに集まってくるようになっている。また、当院の老人デイケアのプログラムには、朝のお勤め、ご詠歌教室、ボランティアによる気功教室、写仏や写経などを導入し、月1回のデイケア法話を開催している。

グループホームと仏教的癒し

  当法人のグループホーム・ルンビニー(認知症対応型共同生活事業所)では、僧籍を持つ職員と「愛媛・仏教と医療を考える会」のボランティア僧侶による入居者に対する仏教的癒しの導入を行っている。ホームの庭の観音菩薩の石像には毎朝何人かの入居者が手を合わせている。仏間には釈迦如来坐像を祀り、釈迦生誕の写真、釈迦の生涯を描いた組絵などを飾って、入居者たちができるだけ仏教の雰囲気に浸れるようにしている。当初は僧侶に対して違和感を抱いていた入居者たちも、「お坊さん」と親しく呼んですっかり馴染んでいる。僧侶と一緒に朝のお勤めをする人、僧侶は入居者たちの話に耳を傾け、やさしく語りかけ、一緒に歌を歌い、四季の移ろいなどについて語り合っている。

  ホームの入居者の平均年齢は83歳で、多くの人は慢性疾患を持っている。必然的にターミナルケア、看取りが大きな課題となる。当ホームでは、入居者本人と家族が希望すれば、ホームでターミナルケア、看取りを行っている。
  息を引き取った人の居室に小さな仏像を祀り、花を飾って職員の僧侶が枕経を唱え、親族、入居仲間、ケアスタッフが1人ずつ焼香をしてお別れする。ターミナルステージを迎えたKさんに対して、ご家族の賛同を得て、臨終行儀を行った。仏間に祀った薬師如来とKさんを五色の幡で繋ぎ、3人の僧侶(善知識)が導師となって、真言や念仏を唱え、般若心経は入居仲間やケアスタッフも一緒に唱えて、浄土への旅立ちを祈った。静かで安らかな旅立ちであった。

 
  医療、福祉の場に宗教者が関わることによって、より深いレベルの全人的ケア、スピリチュアルケアが可能となると考える。
  最近、医療の場でターミナルケア、死の迎え方が改めて問われているが、わが国では、平安時代から盛んになった臨終行儀として、生命の終わろうとする瞬間、臨終前後の患者への対応が重視され、その具体的な方法が実践されてきた。「臨終行儀」は医療、福祉に従事する私たちに多くの学ぶべき内容を示すものである。
−学会のお知らせ−
人体科学会第15回大会 −スピリチュアリティと倫理−
大会会期   2005年12月3日(土)、4日(日)
大会会場    愛媛大学共通教育棟 松山市文京町3番
大会日程(予定)   
【第1日】 12月3日(土)
9:00-10:00 受付
10:00-12:00  公開講演会
  【公開講演1】
「伝統医療における心と体のとらえ方」
愛媛県立中央病院東洋医学研究所内科部長
  山岡傳一郎

【公開講演2】
「呪いと四国」
愛媛大学教育学部教授
  中村雅彦 
12:00-13:00 理事会・昼食
13:00-14:00 総会
14:00-16:00 準備委員会企画公開シンポジウム
「スピリチュアリティと倫理」
パネリスト:
湯浅泰雄(基調講演)、安藤治(基調講演に対するコメント)、山岡傳一郎、中村雅彦、黒田幹夫(司会及び問題提起)
18:00〜 懇親会
【第2日】 12月4日(日)
9:30-11:00 【公開講演3】
「スピリチュアルケアの実践−仏教と医療の融合−」
医療法人ビハーラ藤原胃腸科理事長
  藤原 壽則
11:00-12:30 会員による研究発表、会員による体験発表
12:30-13:30 昼食
14:00-16:00 ワークショップ 公開シンポジウム
18:00〜 懇親会
第15回大会準備委員長 愛媛大学法文学部教授 黒木幹夫
主催 人体科学会
後援 愛媛・仏教と医療を考える会 他
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