Kさんに教えられたコト

グループホーム アショカ 計画作成担当 大谷るつ子

 平成16年4月1日にグループホームアショカが開設され、同日ルンビニーにいらしたKさんがアショカに転居されました。
  仏教への信仰が篤く、それでいて陽気なKさんは大好きな歌でみんなを楽しませてくれるアイドルのような方です。ご家族のコトもとても愛され、息子さんやお嫁さん、すでに亡くなられた夫や父親のことを口にしない日はありません。
  そんなKさんが平成17年夏、突然嚥下困難となり、入院の運びとなりました。入院中は表情もなく、目も虚ろで私の声が聞こえているのかも定かではないほど、弱っていかれました。

  一時はご家族が「最悪の事態も覚悟しています。」と言われるほど悪化していましたが、何とか『胃ろう』の手術を受けて、アショカへ戻って来られることになりました。入居者さんにとってもアイドル的な存在であったKさんが戻って来られるとあって、スタッフと入居者さんと一緒になってKさんの回復を喜び合いました。
  ただ、退院が決定しても意識レベルは低下したままで、入院以前の姿とは別人のようなKさんの受け入れに際し、多少の不安を感じずにはいられませんでした。
  「グループホームでは積極的な治療が出来るわけではなく、吸引まで必要な程の寝たきりの方に今まで通りの体制で十分なケアができるだろうか・・・」、「今のKさんには治療の出来る施設のほうが良いのでは・・・」、「しかし、他の施設に行かれるくらいなら私たちで何とかできないのだろうか・・・」など、ケアスタッフとして様々な思いが交錯しました。

  Kさんの退院後の受け入れに際し、ケアスタッフ側の素直な気持ちを施設長の相原、院長の藤原に相談したところ、「できるところまでやってみよう!医療面は安心して任せて欲しい。何かあったらいつでも電話を!!」という心強い言葉を受け、いざ、退院の日を迎えました。

  他の入居者の方々から、「待っとったヨ」、「お帰りなさい」の言葉を受けながら、アショカの自室のベッドに移って数分後、Kさんが息子さんの顔を見て、「Tつぁん、Tつぁん」と息子さんの名前を呼んだのです。病院ではどんな言葉がけにも反応が無かったのに・・・とご家族もビックリです。

  それからの回復は、ケアをしているスタッフたちも信じられないほどのスピードで進み、1ヶ月後にはリクライニングに1時間ほど離床されるようになり、さらに1週間後には食堂の椅子にも座られるようになりました。
  退院されて2ヶ月経った今では、車椅子で中庭を散策されたり、プリンなどなら口から食べられるようになりました。

  そして、また入院以前のようにご家族のことを気に掛けられるようにもなりました。先日は「2階の仏様にお供えをせんといかん・・・」ととても気にされている様子。「お嫁さんのSさんが毎日してくれるヨ」とお伝えすると、「それなら安心やなぁ」と満面の笑みで答えられました。
  退院時の不安をよそに、アッという間に意識レベルがアップし、言葉が増え、お得意の歌まで歌われるようになったKさん。

  今回、Kさんから大きく2つのことを学びました。
  ひとつは、グループホームの可能性について。確かにグループホームでは積極的な治療は出来ないけれど、QOLを上げることで精神や身体に変化が生まれることを知りました。と同時に、ケアの質の高さを追求することの大切さも痛感しました。
  もうひとつは、入居者さんの笑顔は麻薬のようなもの・・・。たとえ、どんなに体力・気力を消費しようとも、Kさんの笑顔を見たら何もかも引き飛んでいってしまいます。そして、またあの笑顔が見たくて日々頑張っていられるのかもしれません。


  次回はKさんのご長男のお嫁さんからいただいたお手紙を掲載いたします。
バックナンバー