おかみさん、安らかに

グループホーム・ルンビニー 計画作成担当者 松野朱音

 梅の花閨の灯りの消へてより

 町子さんとお別れしてから、早くも1ヶ月が過ぎました。5年余りのルンビニーでの生活でしたが、私の心には町子さんの在りし日の姿が、一緒に過ごした日々が、走馬灯の様に浮かんでは消えて行きます。

 肱川へのドライブの帰りの車中、車に酔った私の背中をずっとなで続けてくれた事、道後のホテルで一緒に温泉に入った事、おかみさんとの呼びかけに「はぁーい」と元気良く返事をしてくれた事、私にしがみつきながら一生懸命歩いていた事など、昨日のことの様です。また、くるくるとよく動く愛くるしい眼、力強かった両手、指、98歳とは思えない、丸いお尻など、大好きでした。

 核家族で育った私は、この仕事に就くまでお年寄りと生活した事は、実際にはありませんでした。人の最期を看取った経験もありません。そんな私が、ルンビニーで入居者さんの最期に立ち合わせて頂き、人の一生の締めくくりの場に居れた事に感謝致しております。また、改めてこの仕事の大切さ、重大さを痛感させられました。

 冒頭の句は、私の父の句です。梅の花は部屋の灯りが消えた後も、姿が見えなくなっても香り高い梅の花の匂いが、部屋の中まで漂って来る、という意味だそうです。

 町子さんは居られなくなりましたが、司馬遼太郎の小説「街道をゆく」の中に、油屋旅館のおかみとして生き続けています。ルンビニーに来られた後も、私たちの生活の中で今も生き続けて、これからも香り続けて行かれると思います。古くは幾星霜と続く、大洲の鵜飼い、大洲城天守閣、近くはNHK連続ドラマのおはなはんの様に、これからも私たちの心の中に生き続けて行くに違いありません。私たちにたくさんの思い出をありがとうございました。町子さん、どうぞやすらかにお眠りください。

 

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