かかりつけ医のもの忘れ外来 (4)
− 痴呆から認知症へ −

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原壽則 

 長い間使用されてきた「痴呆」に替わる新しい用語について検討するため、2004年6月に厚生労働省に有識者による「『痴呆』に替わる用語に関する検討委員会」が設置され、約半年にわたる議論が行われました。検討会では「痴呆」という用語は、
  1. 高齢者の尊厳に対する配慮を欠いた表現であること、即ち、「痴呆」という文字自体や内容に「ばか」「あほう」などの侮辱的な意味が含まれている。
  2. 病気としての実体を正確に表していないこと、即ち、認知症は病気のために認知能の低下したものであり、一般的にみられる病気である。
  3. 「痴呆」という言葉がもたらすマイナスイメージ、即ち、何もできなくなった人、困った人、町にいるのは迷惑な人といった誤解、偏見が、地域において早期発見などの取り組みを進める妨げになっていること、
  などから早急に見直すべき課題として検討を重ね、国民各層から寄せられた意見などを参考に検討しながら、「痴呆」にかわる新しい用語として、「認知症」が適当であるとの結論に至ったのです。

 検討会の結論を受けて、厚生労働省は、行政文書や会議資料等に用いる用語については平成16年12月24日から「認知症」に改めるとともに、地方自治体、関係団体、報道機関に対して、用語の変更についての協力を要請しました。さらに、介護保険をはじめとする法令用語についても、「痴呆」に替えて「認知症」を用いることとされた。

 厚生労働省では、この呼称変更を契機に2005年に「認知症を知り地域を作る10ヶ年」構想をスタートさせました。認知症になると「何もできない」、「何もわからなくなる」と言った誤解や偏見を払拭し、地域の人たちの理解と支えがあれば、その人らしい暮らしを継続していくことが十分可能であることを国民が理解するためのキャンペーン活動である。最初の2005年度を「認知症を知る1年」とし、多くの住民が認知症について、その特徴、予防、なったときの対応、地域での支援などを考えて、認知症の人を地域で支えることの重要性を理解する。

 10ヶ年計画では、認知症について学んだ住民が100万人に達し、さらに、認知症を理解し、支援するサポーターが地域に多数存在し、全ての町が認知症になっても安心して暮らせる地域にあることを目標としています。

 認知症の人たちと接してわかったことですが、心身の底力は豊かに残っていて、喜怒哀楽に対する強い感情、大きなプライドを持ち、よりよく暮らせる大きな可能性を持っているのです。理解と支えで最後まで自分らしく暮らせるのです。
 そのお手伝いができればと考えています。
 以下、認知症についてのメッセージを記してみます。

新しい認知症ケア・10のメッセージ

  1. 苦しみの源は病気です〜冷静にそしてあきらめないで
  2. 認知症状の道のりは長丁場〜一緒に乗り越えていくチームを
  3. 認知症の人が表わす姿〜作られた障害をなくしてその人らしく
  4. 認知症の人の思い〜まずは本人のかたわらにそして対話を
  5. いつでもどこでもなじみの関係作りを
  6. いつでもどこでもなじみの環境作りを
  7. 古い記憶、刻まれている記憶を生かして生きていく
  8. してあげる介護から生き切ることへの支援へ
  9. 自然や町の力を借りて〜地域には宝がいっぱい
  10. 家族にも十分なケアを〜家族の声をそして力を活かして
    (出典 認知症介護研究・研修東京センター「新しい認知症ケア」 中央法規)
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