かかりつけ医のもの忘れ外来 (6)
− 治る認知症 −

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原壽則 

  認知症の診療で忘れてならないのは、「治る認知症」と呼ばれる疾患群があることです。物忘れ外来でかかりつけ医に求められるのは、早期段階での気づき・発見とともに治る認知症を見逃さないことです。これらの疾患は認知症様の症状を呈しますが、いずれも外科的治療などにより改善が望めるものです。

 この範疇に入る疾患としては、「脳腫瘍」、「正常圧水頭症」、「慢性硬膜下血腫」などがあります。治療可能な病気ですから、これらの疾患を見逃さないようにしなければなりません。そのためには認知症患者の診療では、必ず一度は頭部CTを撮ることです。内科の診療で胸部レントゲン写真を撮るようにスクリーニングとし検査します。

 正常圧水頭症では、前号のこの欄で紹介しましたように、脳室が著明に拡大しますし、脳腫瘍は占拠性病変として写ります。慢性硬膜下血腫では脳の表面に三日月型の出血がみられます。それぞれ特徴的な所見を呈しますので、CTを撮れば容易に診断することができます。これらの疾患が疑われた場合は、脳外科医に相談することになります。

 以上、治る認知症として、外科治療の対象になる疾患を述べましたが、内科的にも、甲状腺機能低下、ビタミンB12欠乏症など、内分泌、代謝性疾患に際しても、認知症様症状を呈することがあります。

 以下、アルツハイマー型認知症の経過中に慢性硬膜下血腫を併発した症例を報告します。

症例

H.T氏 87歳 女性

現病歴:
  1999年、物忘れを主訴としてK病院を受診し、アルツハイマー型認知症の診断を受け、定期受診し、塩酸ドネペジル(アリセプト)を服用していた。

 2007年12月15日mK病院より紹介され、当院の物忘れ外来を受診する。
 約1か月前から記憶障害(短期、近時、遠隔)、見当識障害(時、場所、人)が急速に進行し、意欲、関心の低下が進み、易怒性、興奮性がみとめられるようになった。数日来の急速な歩行障害の増強がみられる。

現症:
 介護者(娘さん)が両手で誘導しながら診察室に入ってくる。歩行は極めて不安定で、小さな歩幅、すり足、前屈位で介護者に手を引かれての歩行である。

 MMSE 9点、 NMスケール 11点
 検査所見 一般血液、 ビタミンB12、 甲状腺機能に異常なく、 糖尿病、 高脂血症などの血管性危険因子を認めなかった。
 頭部CT両側の脳表面に血腫を認め、両側の脳実質は高度に圧俳されている。
 両側性硬膜下血腫の診断にてK病院脳神経外科へ紹介する。
 硬膜下ドレイナージ施行、術後3日目より歩行障害は著名に改善し、自立歩行となる。

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