かかりつけ医のもの忘れ外来(8)
高齢運転の事故防止のために − 75歳以上講習予備検査がスタート −

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則 

 6月1日から、改正道路交通法の施行により、運転免許証を更新する75歳以上の方は、高齢者講習の前に、記憶力・判断力に関する講習予備検査(認知機能検査)を受ける必要があります。

 講習予備検査は高齢者講習の前に約30分行われる。内容は(1)年月日などを記入、(2)動物や果物の絵を記憶して記載、(3)時計の文字盤を描写−の3種類となっている。結果によって受験者は3分類され、「記憶・判断力が低い」と判定された第1分類は、過去1年以内か、次の更新までに特定の交通違反があると、専門医か主治医の診察を受ける必要がある。認知症と判明すれば、免許停止・取り消しの対象になる。警視庁が2006年に全国の約4000人を対象に試験を実施した結果、第1分類は約3.2%であった。

 これまで認知症ドライバーの運転は事実上ほとんど制限されていなかった。認知症になると注意力が落ち、信号無視やスピード違反などの原因にもなり、症状が進むと、遠近感が鈍ったり、ルールを守らない運転も増え、事故の危険性も高くなる。これまでにも高速道路の逆走など数々の危険な運転が報告されている。

 講習予備検査には幾つもの問題がある。自家用車以外に交通手段のない山間部の人たちの日常の「足」をどうするか。更に、対象年齢を75歳以上としているが、事故を起こした認知症高齢者の約半数は75歳未満である。即ち約半数がこの検査から抜け落ちることとなる。今回の予備検査は、認知症の中で最も多いアルツハイマー病を対象にしたものになっていて、認知症を引き起こす他の疾患が見落とされる恐れがある。例えばピック病などでは、初期には記憶障害があまり見られないが、社会性を失ってルールを守れなくなるため、事故につながりやすいと考えられる。

 今回の制度では、免許更新のための認知症診断が医師の役割になる。病名告知の問題、告知を受ける人のショックに対する対応など実際に当たってはさまざまな問題が起こってくる。

 今回導入された講習予備検査による免許の取り消しは、認知症高齢者を支えるためのものであるが、それに対するケアやサポートの体制、地域支援体制の構築が急がれる。

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