私も連れて行ってよ〜♪

グループホーム・ルンビニー 介護福祉士 1階ユニット長 橋本 和幸 

 スタッフが入居者さんと一緒に外に出かけようとすると、ある入居者さんから声がかかります。

 グループホーム・ルンビニーでは1階が生活型となっており、入居者さんたちは比較的自立しており、ご自分の意思をはっきり伝えることができます。しかし、時には「今から帰る・・・」と外に出かけようとしたり、すぐ前のことを忘れて、ご飯を「まだ食べてない」と言ったりなど、認知症の症状のある方もおられます。

 スタッフとしても、毎日の生活の中で、「いつ、あの人が外に出るのだろう?」「次は何を言われるのだろう?」などと考え、疲れやストレスがたまります。どうすれば入居者さんの生活が豊かになり、スタッフの疲労を少なくし、良いケアに繋がるのでしょうか?

 1階では、ケアプランの中に、その人の「楽しみ」を盛り込んでいる人がたくさんおられます。ドライブが好きな方、スタッフとのおしゃべりが楽しみな方、外に出るのが好きな方、買い物が好きな方・・・それぞれ、好きなことは十人十色です。

 1日中、ホームの中にいて、TVを見て過ごすだけでは、帰りたくなるのも当たり前ではないでしょうか。いろいろと考えてしまい、不安な気持ちにもなるでしょう。(私も知らない場所で1週間暮らして来いと言われれば、すぐに帰りたくなると思います。いや、走って逃げ出すでしょう。)

  そこで活躍するのが、ケアプランです。
 私たちは楽しいことをしている時は、嫌なことを忘れています。入居者さんも同じで、楽しいことをしている時は、帰ろうと思ったり、不安に思ったり、嫌なこと、嫌いな人などの考えはなくなっているようです。

 少しずつ暖かくなり、外へ出かけることが多くなってきました。ある日、入居者さんたちと外食へ出かけることになりました。その気配に気づいた入居者さんから、かかった声が冒頭の「私も連れて行ってよ〜」でした。その方は「帰りたい」という思いが強い方で、1日に何度も外へ出られます。スタッフが声をかけてルンビニーに戻ってきても、すぐにまた外に出かけます。その繰り返しの1日です。

 日々の生活の中で分かったことは、その方が外出が好きだということでした。外出前は「そこから出て行く」と言っていた方が、「車で出かけよう」と声をかけると、表情がパッと明るくなり、外出中は「帰る」などの訴えは全くありません。スタッフは、その方の「帰りたい」訴えや行動の後に対応すれば疲れてしまいます。また入居者さんも不安になって、「帰らんといかん」と考えることは大変なパワーがいることだと思います。それならば、不安な気持ちになる前に、生活の中に「楽しみ」を取り入れると入居者さんの生活が豊かになり、スタッフにも余裕が出来るのではないでしょうか。

 外に出ることによるメリットはそれだけではありません。ホームの中にいると、冬も暖かく、夏は涼しく過ごすことができますが、季節が分からなくなってきます。ホームの中で、ある入居者さんに「今は何月かな〜?」とスタッフが聞くと、「・・・」考えても答えがなかなか出てきません。しかし、外に出て同じ質問をすると、肌で風を感じ、桜や田植えの風景で季節を感じているため、「今は桜が咲いとるけん、4月やろ?」と答えが返ってきます。五感が刺激され、季節を感じているのでしょう。

 「外に出る」
 当たり前のことですが、高齢になってくると、なかなか出ることが難しくなってきます。しかし、みなさん外に出たいという思いは持っています。
 「車でどっかに行きたいけど、忙しそうやし・・・」
 「TV見よっても、ええもんない」
 入居者さんとの会話から、このような言葉をしばしば耳にします。入居者さんはスタッフからの「車でどっか遊びに行こや」「買い物に行こや」の一言を待っているのかもしれません。

 ホームの理念に「その方の想いを汲み取って生活を豊かに」とあります。
 入居者さんとの会話の中にある本当の想いを、まだまだ私たちは汲み取れていないのかもしれません。スタッフがその想いを引き出し、気付くことによって、その願いが叶い、楽しみを持って生活でき、生き生きとした笑顔が引き出せるように、これからも支援をしていきたいと思います。

 
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