おくりびと

グループホーム ルンビニー 准看護師 木下和子 

  私とUさんの出会いは、平成18年10月9日 松山の秋祭りの翌々日でした。Uさんは長女さん、二男さんのご夫婦と一緒にルンビニーに入居されました。いつも感謝の意を込めて「ありがとう」の言葉をかけてくださったUさん。面会に来られた息子さん、娘さんに対しても、いつも愛情いっぱい注いで笑顔で接しておられました。Uさんは当初から血圧の変動が激しく、離床したくても離床することが出来ない状態で、一日の殆どをベッドの上で生活されていました。
 徐々にムセ込みが始まり、口から食べることが難しくなりました。

 Uさんにとってどのような方法が良いのか、何度もご家族、ドクター、スタッフと話し合いました。その結果、延命するのではなく、自然に近い状態で住み慣れたルンビニーで最期を迎えていただくことになりました。
 平成22年3月26日に天国に旅立たれました。ご家族と話し合って、死後入浴(湯灌)を行いました。湯船の中で、ゆっくりと体を温め、髪を洗い、体を洗うと、頬はピンク色に染まりました。「ありがとう!気持ちよかった」と言っているかのように安らかな顔をされていました。「気持ちよかった?すっきりしたやろ〜 髪も体もいいにおいよ」スタッフが声をかけます。

 グループホーム ルンビニーに就職する前の私は、18年間病院で勤務していました。多いときは一日に2人3人の患者さんを看取り、その都度、時間に追われる様に30分程度で死後の処置を行っていました。色々な機械類を片付け、体のあちこちに挿入されたチューブ類を取り除いて、薬品で体を拭き 言葉をかけることもなく黙々と死後の処置を行い、涙ひとつ流すこともなく終わっていました。死後入浴など考えたこともありませんでした。

 ルンビニーに勤めて初めて死後入浴を知りました。私にとっては大変な驚きでした。病院では、30分以内に処置をしないと細菌が増殖すると教わり、時計を見ながら忙しく作業していました。私にとって 何故 お風呂なのか驚きというより ショック でした。体内から出てくる細菌はどうなのか、感染はしないのか?頭の中は混乱していました。そんな時、スタッフの一言が耳から入って来ました。「気持ち良いでしょう。髪もきれいに洗いますよ」と優しく言葉をかけながら涙を流して洗髪している姿に胸打されました。

 涙を流してもいいんだ… 病院では、笑顔は振りまいても涙を流してはいけない と先輩からきつく言われていたので、決して涙を流すことはしませんでした。病院での私は、決められた業務だけをしていたように思います。人として当たり前の姿、その人らしい姿でいて欲しいという、“豊かさを求める支援” をルンビニーで学びました。

 ルンビニーは生活の場所であります。スタッフは、家族にはなれないけれども、家族のような気持ちで接しています。仕事ではありますが、実際自分の家族以上に一緒にいる時間は長く、スタッフと入居者の間に 愛情 が自然に生まれているように思います。
“その人らしく、きれいな姿でお別れしてもらいたい”そんな思いが死後の入浴に繋がっているのだと思います。私達が最期にできる支援です。

 「ありがとうございました。母をこんなに綺麗に、『おくりびと』の様にしていただいて… 感謝の気持ちでいっぱいです。」涙を流して温かい言葉をいただきました。

 私達は、Uさんから多くのことを学び、沢山のものをいただきました。今までの生活の中で喜びや感謝の言葉をいつもいつもいただきました。最期まで一緒に過ごせたことを何よりも嬉しく思います。

 これからも、涙や笑いが絶えない人間味あふれるルンビニーで、豊かな支援を心掛けて頑張って行きたいと思います。

 
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