服薬管理 −認知症の人の服薬−

医療法人ビハーラ藤原胃腸科
藤原 壽則

 認知症の患者さんの診療で問題になることの一つが服薬管理です。記憶力、判断力が低下している認知症の人では、薬を飲まなかったり、余分に飲んだりすることがしばしばあり、また、毒を盛られていると言って薬を飲もうとしない人、睡眠薬などを飲んだ後で何度も要求してくる人などもあります。これは、認知症の患者さんでは、記憶力、判断力の低下によるもので、家族や介護スタッフによる介護など、それぞれの患者さんの環境を考慮した様々な工夫が必要になってきます。服薬を拒否する人には、薬を粉にして食べ物に混ぜて服薬してもらっています。記憶障害のため、飲んだことを忘れて「飲んでいない」と言って薬を繰り返し要求することもしばしばみられます。この場合、「さっき飲んだじゃないの」と言う対応は全く説得力を持たないばかりか、本人をますます混乱させます。こんな患者さんには、適当な消化剤や整腸剤とか、サプリメント製剤を、要求の度に「よく効く薬よ」と言いながら与えてもらっています。

 自分である程度服薬管理ができる認知症の方に対する服薬を確実にするための工夫としては、@数種類の薬を1包化して、一度に飲みやすいようにする。A服薬ボックスを用いる。Bカレンダーに貼って見やすい場所に置く。Cテーブルの上に「薬は飲みましたか」と大きく書いた紙を置く。 などです。

 さらに、このような工夫でも服薬困難な場合は、服薬時刻を工夫して、ヘルパーさんが訪問した時間に合わせて服薬してもらうとか、デイサービスを利用している場合は、施設のスタッフに協力してもらう、などもよい方法だと思います。

 薬を飲まない人に対する工夫としては、@飲みやすい形にする。Aどうしても必要な薬に絞る。B食べ物や飲み物に混ぜる。C味を考える。D注射や貼り薬に変更する。 などです。さらに服薬回数の検討、薬剤の形状、服薬時の姿勢、道具(コップ、ストローなど)などの工夫も有効な場合があります。

 散剤や単純な錠剤では苦い薬も、糖衣錠やカプセルになれば、苦みを感じなくなります。シロップや砂糖を混ぜると飲みやすくなる場合もあります。高齢で嚥下障害があったり、錠剤がうまく飲み込めない人もあります。アルツハイマー型の認知症に処方されるアリセプトには口腔内破壊タイプのD錠やゼリータイプのものもあります。D錠は口の中に入れたら水がなくても溶けますからごくんと飲み込む必要がありません。薬の形状を変えることによって飲めることもしばしばあります。

 次に薬剤管理ですが、まとまった薬を本人に管理してもらうことはやめた方がよいでしょう。私は、同居家族がいるときは、家族にお願いしています。独居などの場合は、利用しているデイサービスのスタッフや訪問介護のヘルパーさんの協力をいただくようにしています。薬を重ねて服用することは大変危険です。高齢者はいくつもの疾患をもっていることも多く、中でも血圧、糖尿病、精神に作用する薬などでは時には重篤な副作用を起こしたり、時には命にかかわる場合さえあります。服薬管理は重要な課題です。

 
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