グループホーム・ルンビニーとターミナルケア
−安穏(あんのん)死を考える−

医療法人ビハーラ藤原胃腸科
藤原 壽則

 グループホームルンビニーでは、入居者ご本人、ご家族が希望すればホームでターミナルケア、看取りを行っている。
 先般、YKさんが静かに旅立たれた。

YK氏 93歳 女性
2002年2月14日 グループホームルンビニーに入居
診断 老年期認知症、慢性関節リウマチ、変形性膝関節症

 下宿してS女学校を卒業し、国鉄職員であるご主人と結婚、縫物をし、琴や俳句を楽しみ、孫たちを可愛がる優しい、几帳面な性格の女性であった。

 グループホーム入居時は、下肢筋力の低下、円背のため歩行は不安定であるが、口癖のように「知らぬ間に 90歳の坂を越え 手押し車に身を任せ よちよち歩きがやっとです」と呟きながらホールや廊下を手押し車を使ってゆっくりと歩いていた。自分の居室の片づけ、洗濯物の整理をし、介護職員と一緒にテーブルを拭いたり、お茶を入れたり、野菜を刻むなどの作業もできた。よく本を読み(四国遍路の本を愛読していた)、毎日日記を書いていた。

 2008年頃から、居室のベッドに仰臥することが多くなり、次第に傾眠傾向となる。

 2009年1月には、市の職員が内閣総理大臣福田康夫からの百歳長寿の祝賀の賞状を持ってお祝いにくる。グループホームでも、スタッフたちがみんなで、ささやかなお祝いの会を持ちました。お孫さんたちの手作りの大きいケーキを囲んでみんなでお誕生日の歌を歌った。

 2010年春から傾眠傾向が強くなり、終日ベッドで過ごし、嚥下障害もあって食事摂取量が少なくなってきました。介護職員たちは工夫して時間を作り、できるだけYKさんの側に付き添い、話に耳を傾け、手を握り、背中をさすっていました。

 2010年9月2日、午前9時すぎ、血圧低下、脈拍微弱で不整となり、10時20分、呼吸停止、心停止、瞳孔散大し、ご家族(長男夫婦)、介護職員たちに見守られて眠るように息を引き取りました。枯葉がふわりと大地にかえって行くような、静かな死でした。

 ご家族、介護職員たちで死後入浴を行いました。湯船の中でゆったりと体を温め、介護職員たちが「気持ちいいでしょう、髪も体もいい匂いですよ」と語りかけながら、丁寧に髪を洗い、体を洗いました。

 死後の入浴により身体は柔らかくなり、皮膚に生気が戻って、柔和で美しい顔になる。エンゼル化粧をすると、苦痛の表情は消え、安穏の、微笑んでいるようでした。

 ターミナルケアと看取りについての面談
 容態の変化に応じて医師、看護師や介護スタッフが病状の見通しをご家族に説明し、YKさんの最期に関するご家族の希望を聞きました。その結果、延命処置はしないで、自然に近い状態で、住み慣れたグループホームルンビニーで最期を迎えさせて欲しいとのご家族の希望に従ってケアを行いました。

 ドイツの養護老人ホームでは、入居者のほとんどはそのホームで死を迎えている。食事も水も受け付けなくなったら、点滴もしないで自然に任せる。これを「安穏死」と呼びたい。

 わが国では、介護施設で食事、水分の摂取が困難になった場合、多くは病院に移されて点滴や経管栄養が行われ、胃ろうが設置されている。医療経済研究機構調査(2005年)の特別養護老人ホームに関する調査では、最期を迎えたい場所として、本人、家族の57%、59%がホームとしているが実態はホームで最期を迎えた人は7%に過ぎないと言う。

 老衰の終末期ケア、看取りはどうあるべきか、その際、私たちがしなければならないケア、医療とは何か。グループホームルンビニーでは、スタッフ一同、ターミナルケアの在り方、死が差し迫った時、肉体的、精神的、社会的、そしてスピリチュアルにどのような支援ができるのかを学習し、よりよいケア、よりよい看取り「安穏死」を求め続けて行きたい。死は人生のクライマックスなのです。

 以下、禅僧・白隠師の言葉を紹介したい。

  1. 人間は天寿を全うすれば、死を安らかに迎えることができる。
    人間はそうできている。
  2. 人間 は自己の使命を全うすれば、死を安らかに迎えることができる。
    人間はそうできている。
  3. 長寿を保つことが「見性得悟」であること。
  4. 「見性得悟」した人は、天寿を全うする心境になる。

(「夜船閑話」 白隠)

 
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