最期のひと時。

ルンビニー 介護職員 松田 紗季

 平成23年7月19日
 私がルンビニーで夜勤を始めて4回目の明け方です。 朝、トイレへ行くため鳴らしてくれるMさんの鈴の音が今日は鳴りません。 様子を見に行くと呼吸は浅く、SPO2も80%を切っていました。先生の指示により、その日から点滴が開始されましたが拒否が強く、目を覚ますたび「姉さん、はずしてや!」辛そうな表情で訴えていました。

 家族さんとの話し合いの結果、3日間点滴を行った後は”自然な状態で”ということになりました。それからMさんはスイカ割りをしている声を聞き、「にぎやかななぁ」と話されたり、ご飯の時間になると「何か食べさせてや」と言われたり、ルンビニーの雰囲気をしっかり体で感じ取っているようでした。

 7月28日
 点滴が終了し7日目、私は再び夜勤入りです。声をかけると言葉は返ってきませんが細い手でゆっくり手を握りかえしてくれました。畑で黙々と作業をされた”手”、「これお食べ」駄菓子を渡してくれた”手”、Mさんとの出来事を思い出しました。夜間は1時間おきのバイタルチェックの指示でした。次の日には娘さんが松山に戻ってこられるということで、バイタルチェックの度、「あと○時間で来られるよ。娘さんに会えるね」と、声をかけました。

 7月29日
 「Mさんが亡くなられた」との連絡がありました。ルンビニーに着き、Mさんの部屋に駆け込むと、一生懸命呼吸していたMさんが、静かにゆっくりと休まれている穏やかな姿がありました。

 ホームで畑仕事を一生懸命されていたMさんの姿を思い出しながら、スタッフ全員で死後入浴を行います。みんなで声をかけながら頭を洗ったり、体を洗ったり・・・ 手を握るともう握り返してはくれないけど、湯船につかったMさんの体は温かくてやわらかく、まだ”生きている”ような錯覚をおこしそうになります。5分ほど経つと体は冷たく、そこではじめて私は”死”を認識しました。

 Mさんの最期の大切なひと時に関わらせていただけたことをしっかり受け止め、私も一生懸命生きていこうと思います。
 またどこかでMさんの笑顔に会えることを信じています。
 ありがとう、Mさん。

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