ルンビニー10年の思い −マヤの木によせて−

ルンビニー 介護職員 加藤 健次

 10年一昔と言いますが、私がここルンビニー開設当初から関わりを持ち、アッという間に10年の月日が経ちました。思えば45年前に亡くなった父に対し、何ら親孝行ができなかった後悔から、何か人の為にしたい、何か困っている人の為に役に立ちたいという思いを持ち続け、50歳を期に福祉の道に入り、現在ルンビニーでお世話になっています。こんな何も分からない人間を、理事長は快く受け入れて下さり大変感謝しております。当時痴呆症と言われていました認知症についての知識、何より入居者さんの思いや気持ちを理解しながらのケアを学ばせていただきました。やはり当初は不安とまどいの連続で、試行錯誤の毎日でした。その中で入居者さんとなじみの人間関係を作るにはどうしたらいいのだろう、どうしたら喜ばれ笑顔を見い出せるだろうと考えながら、気持ちを汲み安心して生活できる環境を作っていこうと思いました。

 私が最初の夜勤の時に、いきなり殴られたりした事もありました。また、唾をかけられたり蹴られたりと受難の日々もありました。人それぞれに意味、思いがあっての行為であることが理解でき、言動を否定せず受け入れることが大切であることも教わりました。こだわり続ける入居者さんに対し、その場しのぎの対応をしたり、偽りのことばで納得させなくてはならないこともしばしばありました。

 しかし、楽しいこと、素晴らしい思い出もいっぱい作りました。お花見は寝たきりの方も含めて、全員参加が私のモットーでした。今から6年前のお花見で、普段からずっと寝たきりの方が、松山総合公園の坂道から「あー興居島が見える」と言ったことばに、私たちは感銘を受けました。居室から見える景色は限られています。今、昔見た興居島の事を覚えていて出てきたことばに、私は嬉しく涙があふれ出てきました。感動していただいた瞬間、場面でした。感動と喜びを引き出し、心に残るエピソードをたくさん作っていきたいとその時思いました。現在は、夢プランとして、外出を含めお墓参りや旅行などを実行しています。

 素晴らしい出会いがあれば、悲しい別れに直面しなければならないこともあります。入居者の方の死は悲しくて辛いことですが、その方の老いと輝いた日々をしっかりと見続けることが、死を受け止めることだと思います。ここルンビニーでは、本人、ご家族が希望すればホームでターミナルケア、看取りを行い、ご家族了解のもとで湯灌を行っていますが、きちんと清い体でご家族にお返しするのが最期のケアだと思っています。

 私たちの仕事はスタッフの質で決まると思います。スタッフが何も考えず何もしないでいたら何も起こりません。常に入居者さんが形成している世界を理解し大切にした上でのケアが必要です。常に創意工夫し、試行錯誤しながら、正解のない答えを見い出していかなければなりません。私たちスタッフは、入居者さんの残された大切な命に寄り添い、充実した余生を過ごしていただくという使命があります。その為には、スタッフ自身も健康でなくてはならないのです。私はこの10年間大病もなく勤めさせていただいたのは、家族はもとよりまわりの方々の気配りご厚情の賜と感謝しております。

 最後になりましたが、この度開設10周年を記念して、スタッフ全員からルンビニーへ、後々残るもととして桜の木を贈呈しました。その桜の木に、理事長は「マヤ(お釈迦様のお母さま)の木」と命名しました。設立10周年のルンビニーは少年期です。今後、青年期、壮年期としてマヤの木同様成長することを願っています。その点ルンビニーには、若くて素敵な心を持ったスタッフがたくさんいます。今後のルンビニーの発展とスタッフたちの活躍を見守ってください、「マヤの木」よ。

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