認知症の予防(1)

− 生涯現役 −

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

 厚生労働省の推計によれば、平成24年のわが国の認知症患者は462万人、65歳以上の人の15パーセント、さらに軽度認知機能障害(MCI)の400万人を加えると、実に4人に1人が認知症またはその予備軍である。

 認知症の増加の最も大きな原因は、寿命の延びである。

 日本人の平均寿命は昭和10年には男性46.9歳、女性49.9歳であったが、平成20年にはそれぞれ79.9歳、86.1歳となっている。寿命の延びは、私たちのライフサイクルにも大きな変化をもたらし、末の子供が独立してから、親が何年生きているかについての統計では、大正期で男性6.4年、女性10.6年であったが、平成期(平成3年)にはそれぞれ24.3年および32.4年となっている。

生涯現役

 先ず、呆けを防いで健やかに生きるための方法として、実行していただきたいことを記した書物を紹介したいと思います。
 医学関係の図書などを出版している株式会社共和企画の梅田幸雄会長が「生涯現役」という本を出版しています。生涯現役を続けている35人の方々にインタビューしたデータをまとめたものです。本書に登場する人物は、谷川徹三、清水幾太郎、高木東六、宮城音弥、宇野千代、加藤シズエ、淡谷のり子などの著名人諸氏です。年齢は76歳から100歳まで、平均年齢83歳です。
 これらの方々には、共通したいくつかの公約数的なものがあり、これを10項目にまとめています。

「生涯現役」の10項目

(1)自ら老け込まず、いつまでも壮年の気概をもつ。
 老化を防ぐには気を若く持つことが大切です。若々しい人は、さまざまな物事に対する興味や関心が強く、意欲が盛んで、身体もよく動かすことになり、脳の刺激と、肉体の老化防止にもなるのです。

(2)血圧はほとんど正常で、180以上の人は1人もいない。
 高血圧は血管の老化(動脈硬化)の元凶です。狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血などは血管の老化によるものです。高血圧の人の認知症発症は一般の人の2倍と言われています。

(3)無頓着で、自分の血液型を知らない人が10人近くいた。
 重要でないことに神経を使わず、不必要なストレスは取り除きましょう。

(4)太りすぎの人は1人もいない。
 肥満は心臓の負担になり、血液脂質異常症を誘発して動脈硬化を促進します。

(5)例外もあるが両親も比較的長寿である。
 長寿には遺伝の存在する可能性があります。しかし、高血圧の遺伝があっても、きちんと対応できれば、あってなきがごとくですし日常生活習慣をただすことにより、疾病を予防することができるのです。

(6)大部分の人が大病の経験がない。
 寿命を長くするためには、病気をしないことです。

(7)タバコはほとんどの人が吸わない。
 タバコが健康上有害であることは異論のないところです。動脈硬化から心筋梗塞、脳卒中の発症にとつながり、喫煙者の認知症発症率は、非喫煙者の1.8倍などの報告がみられます。

(8)深酒する人は1人もいない。
 酒の効用を説く人も深酒には否定的です。
 1日日本酒で2合程度、週2日程度の休肝日を設けることをお勧めします。適量のワインの認知症予防効果も報告されています。

(9)2、3の例外はあるが、なんらかの運動を心掛けている。
 運動が健康上は勿論、認知症予防にも有効であることが分かっています。運動は足腰を鍛えるのみならず、脳の血流を増し、脳の新陳代謝を盛んにすることにより、老化予防、認知症予防につながるものです。

(10)ほとんどの人が筆マメである。
 認知症予防にきわめて大切な項目です。私たちのデイサービスでも、学習療法で文章を書くことを取り入れていますし、通所者たちに日記を書くことなどを勧めています。

 上記10項目を守れる人は呆けにくい人ということです。

 

参考文献  
梅田幸雄 「生涯現役」、協和企画、1985
本間 昭 「認知症予防・支援マニュアル」、2008
大友友一 「ぼけになりやすい人・なりにくい人」、栄光出版社、2008
山口晴保 「認知症予防」、共同医書出版社、2008
 
 
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