認知症の予防(4)

− 運動と食事 −

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

有酸素運動

 認知症の約60%を占めるアルツハイマー病。物忘れなどの症状が出る20〜30年くらい前から、脳に「アミロイドβ」が溜まり始める。そのタンパク質の毒で神経細胞が傷つき、認知機能障害が起こるとされています。

 世界中の疫学データから、アルツハイマー病の発症を下げる、という科学的根拠が最も確かなのが運動、特に有酸素運動です。
 実験では、運動しているマウス群は、運動していないマウス群に比べてアミロイドβの溜まる量が半分以下というデータもあります。また有酸素運動をすると酸素が血流に入って血管を広げます。血液の循環が活発になって脳の血流も増えるので、そのことが認知症の発症率に関係していると考えられます。
 人についての報告では、運動習慣とアルツハイマー型認知症の危険度については、普通の歩行速度をこえる運動強度で週3回以上運動している者は、全く運動しない者と比べて、危険度が半分になっています。
 ある程度息が弾むくらい、平静時の脈拍が60〜70の人なら、90近くぐらいまでアップする程度のウォーキングが有効だといわれています。時間としては1回30分、週3回は続けたいものです。少し汗をかく程度、心臓がどきどきするような強さの身体活動をしたいと思います。
 アミロイドβは、認知症が発症する20〜30年前から徐々に溜まり始めるとされているため、できれば20代、30代から運動に取り組みたいものです。
 しかし、身構えて運動をすることを億劫に思う方は、家事手伝い、床掃除など、また、積極的に地域のイベントやボランティア活動に参加するだけでも十分体を動かしていることになります。また、高齢になると骨も筋肉もだんだん失われていき、使わないと拍車がかかります。急な激しい運動は逆効果です。先ずは週1〜2回、できる範囲から始めて、徐々に慣らしていきましょう。

認知症予防の食事

 認知症のリスクを低下させる食としては、世界無形文化遺産「地中海料理」と「和食」です。地中海料理の認知症予防効果については多くの研究報告があります。
 魚料理を中心に野菜、豆類をふんだんに使い、オリーブオイルをかけて食べる。ポリフェノールを含むワイン、食後の果物も有効です。オリーブオイルは抗酸化成分を豊富に含み、血液中の悪玉コレステロールを減らして動脈硬化を予防する効果も明らかになっています。
 和食の予防効果を調べた研究はほとんどありませんが、脳の血管の若さを保つDHA、EPAを豊富に含む青魚をはじめ、血中コレステロールや中性脂肪を低下させるレシチンを含む大豆製品、抗酸化作用のある野菜などが豊富で低カロリーになっています。和食も地中海料理にひけを取らない認知症予防効果のある料理と考えられます。
 以下、報告されているアルツハイマー型認知症と食習慣に関する報告を紹介します。

(1)魚の摂取量とアルツハイマー型認知症の危険度
 1日1回以上食べている人に比べて、ほとんど食べない人の危険度は5倍であったとの報告があります。
 脂肪は大事なエネルギー源ですが、生活習慣病を予防する上で、とり過ぎは禁物です。また、認知症になりやすくする脂肪となりにくくする脂肪があることが分かってきました。「飽和脂肪酸」の多い肉の脂肪をとり過ぎると認知症になりやすく、「不飽和脂肪酸」が多い魚の脂肪を多く摂ると認知症になりにくくなると言われています。魚に多く含まれる不飽和脂肪酸は、DHA(ドコサヘキサエン酸、直接脳に対する作用)やEPA(エイコサペンタエン酸、抗動脈硬化作用、血清脂質改善作用)だと言われています。
 大きな目安として肉より魚に重点を置くことです。週2回は肉料理、5日は魚料理をメインとし、野菜を食べるのが理想です。肉には魚では得られない貴重な成分(良質なたんぱく質やビタミン群の供給源)があり、適度に食べなければなりません。

(2)野菜や果物のビタミンEの摂取量とアルツハイマー型認知症の危険度
 野菜や果物の摂取量が多いとアルツハイマー型認知症の発症率は低いが、野菜や果物に含まれるビタミンEの摂取量で比べると、摂取量が多いと少ない者に比べて、アルツハイマー型認知症の発症危険率は3割であったという。野菜や果物に含まれるビタミンE、ビタミンC、ベーターカロチンの効果によるものと考えられます。
 体内に取り入れた酸素から生まれる「活性酸素」は、細胞を傷つけます。そのため、抗酸化物を含むものを意識して食べるのがよいと言われています。その代表的なものがビタミンC、ビタミンE、ベーターカロチンなどを多く含む緑黄色野菜です。

(3)ワインの摂取量とアルツハイマー型認知症の危険度
 ワインの摂取では、飲まない人に比べて週1回以上飲む人は発症の危険度は約半分になると言われています。赤ワインに含まれているポリフェノールが関係していると考えられています。ポリフェノールはぶどうの皮や種子にたくさん含まれており、赤ワインは皮も一緒に発酵させるので、ポリフェノールは白ワインよりも赤ワインに多く含まれているのです。男性は1日ワイングラス2杯、女性は1杯程度が適当です。
 ポリフェノールは脳神経細胞を保護する作用があるとされ、植物が光合成するときに作られる。多くの野菜や果物に含まれる他、ゴマのセサミン、大豆のイソフラボン、ワインのアントシアニンなどが知られています。肉や魚には含まれていません。

 
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