認知症予防

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

3.シナプソロジーとコグニサイズ
 
 日々の診療で出会う高齢の患者さんのなかにも、全くボケなくて頭がしっかりとしている方がけっこういらっしゃいます。高齢を迎えてボケる人とボケない人、この違いはどこからくるのでしょうか。最近の研究から活動的な生活習慣を持っている高齢者は認知症になりにくいということが分かってきました。前号でウォーキングの効用を説明しました。最近の研究では、運動と認知活動を組み合わせたプログラムが認知症を予防するための最重要課題である記憶の機能を向上させることが分かってきました。

シナプソロジー

 運動に加えてほかのことを同時に行うと、認知症の予防に有効です。シナプソロジーは、頭とからだを同時に使って脳の活性化を促すプログラムです。たとえば、じゃんけんや足踏み、ボール回しなどの軽い運動をしながら、声を出したり、計算したりします。2つ以上のことを一緒にやることで、視覚や聴覚などの五感や、認知機能を刺激します。
 例) 
 ◆3の倍数で足上げ
 声に出して1、2、3・・・と数字を数えながら足踏みをする。3の倍数で足踏みを止めて、片足を上げる。
 ◆すりすりとんとん
 右手はグーにして上下に動かし、左手はパーにして円を描く。疲れてきたら左右の手の動きを入れ替える。

コグニサイズ

 コグニサイズとは、英語のコグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせた造語で、頭を使う課題(コグニション課題、認知トレーニング)とからだを動かす課題(エクササイズ課題)を同時に行うことで、脳とからだの機能の効果的な向上を狙うものです。有酸素運動が認知機能の低下を防ぐ可能性があることは、これまでの研究で分かっています。さらに、運動と認知トレーニングを同時に行うことにより、記憶力低下を防ぐ可能性があることが分かってきました。コグニサイズを行うグループでは、将来的にアルツハイマー型認知症に進む可能性が高い記憶障害があるMCI(軽度認知機能障害)の人では、記憶力テストの成績がよくなり、脳の委縮の進行が抑えられると言われています。
 コグニサイズは1回以上を毎日続けることが必要です。しかし、同じコグニサイズを続けていくと、次第に慣れが生じて、からだや脳への刺激が弱くなります。そのため、負荷を落とさないように、段階的に運動や認知トレーニングの強度を上げていく工夫が必要です。仲間とワイワイと楽しみながらやった方が、コミュニケーションの認知症予防効果も期待できると思います。コグニサイズは認知症と診断された人の機能改善が報告されています。また、妄想、暴力、徘徊などのBPSD(行動・心理症状)にも有効だと言われています。軽い運動から始めて、興味を持てるような課題を探していくことが重要です。
コグニステップ 数を数えながら体を動かす。
コグニウォーク ウォーキングをしながら、しりとりなど。

参考、引用文献
認知症予防の簡単エクササイズ、島田裕之監修、NHK出版、2014
すべてがわかる認知症、朝日新聞出版 2015

 
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