認知症予防
−認知症の非薬物療法と認知症予防−

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

 認知症の治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせて行われている。非薬物療法では、回想法、芸術・絵画療法、音楽療法、運動療法などがあり、現在医療機関や介護施設でさまざまな方法で実践されている。
 この非薬物療法が、認知症がもたらす様々な症状を軽減させるのに、重要な役割を果たしている。感情が安定したり、妄想、徘徊、暴言などの行動・心理症状(BPSD)が改善するなどの効果が認められている。非薬物療法による刺激が認知症の人によい影響を与えられているのである。さらに、これら非薬物療法には、認知機能の改善効果が期待され、認知症予防の方法としても多くの医療機関、介護施設などに導入されています。
 昔の楽しい出来事を思い出しておしゃべりしたり、絵や音楽を楽しんだり、それらを通じて周りとコミュニケーションを取ったり・・・。これらの活動で脳が刺激を受け、活性化するのです。
 以下、主な非薬物療法を列挙し、説明します。

認知症で行われている主な非薬物療法・ケア
回想法 過去の懐かしい記憶を引出し、その経験を語り合う
芸術・絵画療法 絵を描いたり、作品を作ったり、芸術鑑賞をしたりする
音楽療法 音楽を聴いたり、歌ったり、演奏したりする
運動療法 有酸素運動や筋トレをしたり、リズムに合わせて体を動かす
作業療法 家事(料理や買い物)や、手工芸などをする
アロマテラピー 香りをかぐ
タクティールケア 手を使って、相手の背中や手足をやわらかく包み込むように触れる


回想法
  回想法とは、アメリカの精神科医R.Butlerによって創始された心理療法です。主に高齢者を対象に、人生の思い出や歴史を、受容的、共感的な態度で聞くことを基本姿勢とします。
  当法人では、グループホーム、デイサービスセンターなどで導入しています。当法人の回想法は、週1回約1時間のスケジュールで実施されています。小学校時代の生活をテーマにした回想では、ある一人の女性が用意した「尋常小学校読本」を眺めながら「こんな教科書使っていましたか」と優しい口調で尋ねると、隣の男性が「さいた、さいた、さくら・・・」と懐かしそうに教科書を読んでいます。

リーダー 1名、 コ・リーダー 2〜3名
参加者 6〜8名

 メンバーが円形に座り、参加者にテーマに沿って懐かしい話や思い出を話していただき、スタッフは傾聴する。さらに、参加者同士の交流を促す工夫をする。
 回想を促すために、さまざまなものを用意します。例えば、古いアルバム、昔の教科書や遊び道具、生活に使った古い道具など。

回想法に対する評価:
 過去の体験を手掛かりに自分の体験を語ることで認知症の進行を抑えられる。心理療法の1つである回想法の有効性が、研究によって検証されている。

音楽療法
 好きな音楽を聴いて癒されるという経験をした人は多いと思います。懐かしい歌を歌い、音楽を聴くことで認知症の症状が和らぐ。五感を楽しませる芸術は、認知症の治療に生かされている。音楽療法は、認知症のほか、パーキンソン病、統合失調症の治療に、末期がん患者のケアなど、多くの場面で活用されています。
 方法としては、歌唱、楽器を使った演奏や合奏、鑑賞などさまざまです。音楽療法を始める前に、参加者の思い出の歌、これまで生きてきた背景、好みなどを聞いておき、プログラムを作る。当法人のデイサービスでは、スウェーデンで開発されたブンネという簡単な弦楽器を用いて、演奏や歌唱を行っている。
 認知機能の低下が軽度の場合、曲の歌詞の決められた文字(例えば「さ」)や濁点で手を叩く、童謡など昔懐かしい2つの曲を1フレーズごとに歌う、など頭を使いながら楽しめる内容を取り入れることが必要です。

芸術療法
 認知症やその症状改善に絵や作品を作ったり、鑑賞したりすることによる効果があると言われている。
 芸術療法は、個人やグループ、時には家族も参加して、ひとつのテーマを設定し、絵を描くことで脳の活性化を図る。
 ただ単に絵を描き作品を作るのではなく、五感を使って脳を刺激し、昔のことや楽しかったときのことを回想したり、話したりすることがポイントです。色使いや筆の選びなどで悩んだり、考えたりすることも重要です。多少のストレスを感じながら絵を描くと、楽しいと感じるだけの時より認知機能の維持、改善により有効だと言われます。
 作品の完成により、できなくなったことが多くなった人に自信を持ち、できた作品を鑑賞して互いの作品を認め合うことで達成感を感じてもらいます。

タクティールケア
 スウェーデン生まれのケアで、ラテン語の「taktilliss・触れる」が語源である。相手の体を触れる、撫でる、包む込むことにより、穏やかさや安心感を与えるケアである。コミュニケーションを通して相手の心配、不安な感情や痛みの軽減などの効果がある。

タクティールケアの効果:
 ・心配、不安の軽減
 ・痛みの軽減
 ・吐き気の緩和
 ・腸機能の改善
 ・活力が高まる
 ・日常生活動作(ADL)の維持向上
 ・生活の質(QOL)の向上
 タクティールケアでは、体に触れることによって下垂体からオキシトシンというホルモンが分泌され、血液を介して体内に広がることで心地よい感触が得られるとされています。
 当法人では、日本スウェーデン福祉研究所の研修で資格を得た人たちによって毎週デイサービスの通所者にタクティールを行っている。利用者たちから好評を得ている。

 
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