最期の医療
意思表示できず対応困難な場合

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

  高齢化社会が急速に進み、心身の衰えや認知症などにより意思表示できないまま人生の最期を迎えるケースが多くなっています。我が国の平均寿命は女性で86歳、男性も80歳を超え、世界一の長寿国となりました。今、健康寿命、すなわち、人間は高齢になれば誰しも体力が低下するものであるが、病気をすることなく、健康で介護を受けないで自立して生活ができる年齢が大切だとされています。寿命と健康寿命では約10年の差があるといわれ、日本人の場合、健康寿命は75歳と言われています。この年齢を超えると加齢とともに体力が落ち、この状態を「サルコペニア」とか「フレイルティー」と呼んでいます。

 「サルコペニア」とはギリシャ語からきた言葉で、サルコ(sarco)は筋肉、ペニア(penia)は減少の意味で「加齢性筋肉減弱症」と訳されています。高齢になると歩いて躓いたり、転倒したりすることがあり、歩行速度が遅くなり、長距離の歩行が困難になります。「フレイルティー」は英語のfrailtyで、虚弱、衰弱、老衰などを意味し、フレイルティーの要件は、体重減少、疲れやすい、筋力の低下、歩行スピードの低下、活動力の低下などです。

 「サルコペニア」、「フレイルティー」と共に健康寿命の短縮の原因になっているのが認知症です。我が国における認知症の患者は462万人と言われ、団塊の世代が75歳になる2025年には720万人になると推計され、総人口の6%が認知症という時代を迎えます。

 世界一の長寿国となった私たちですが、人生の最終段階で意識がなくなったり、自分で意思表示できなくなったとき、どんな医療・介護を受けるのか。心身が衰え、老衰に近い状態の高齢者、認知症高齢者が抱えやすい問題としては、低栄養や嚥下障害(誤嚥性肺炎)、薬の副作用、せん妄(意識の混濁)などがあります。そういった中で、経口で食事、水分が摂れなくなったとき、腎機能が低下したとき、心臓や呼吸が停止したときなど、どう対応するかを迫られるわけです。

 当法人のグループホームでは、入居者と家族、連携診療所の医師、ホームの担当職員、施設長、管理者による話し合いを持っています。入居時の話し合いでは、当ホームのケア、認知症の概略とその経過などを話し、ご家族の希望などを聞きます。入居後は定期的に話合いを持ち、さまざまな検査の結果、入居者のホームでの様子などを話合います。入居者がターミナルステージに近くなったときは頻回に話し合いを持ちます。

 当法人のグループホームでは、入居者やご家族が希望すれば、ターミナル・ケア、看取りを最後までホームで行っています。食事が食べられなくなったときの人口栄養、チューブ栄養については、おなかを手術してチューブを通す胃瘻、鼻からチューブを通す経鼻栄養、血管に直接入れる中心静脈栄養などとそれぞれの長所・短所を説明します。

 呼吸がおぼつかなくなったときの人工呼吸器
 がんが見つかったときの手術や抗がん剤
 錯乱状態のときの身体拘束
 入院で医療を受けるか、在宅(グループホーム)で診療、介護を受けるか

 これらの選択に当たっては、入居者の生活歴、家族との日常の会話、グループホームでの生活などを参考にして、できる限り入居者本人の意思を反映した選択をするようにしています。

 この話し合いを通して、入居者と家族、ホーム職員が情報を共有し、最期までその人らしく生きて、旅立ちを人生最大の輝かしいイベントとして送りたいと考えています。

 
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