かかりつけ医の認知症診療

医療法人ビハーラ藤原胃腸科 藤原 壽則

 厚生労働省の発表によれば、我が国における認知症の患者数は462万人(2020)で、団塊の世代が75歳になる2025年には700万人になると推測されています。同年の我が国の人口が1億2000万人と推測されていますので、総人口の約6%が認知症という時代を迎えます。さらに、認知症予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)400万人を加えると高齢者の4人に一人が認知症またはその予備軍ですが、10年後には両者を合わせると1000万人を越えるでしょう。

認知症とは
「一度獲得した認知機能(記憶、認識、判断、学習など)の低下により、自己や周囲の情況把握・判断が不正確になり、適切な対応がとれなくなり、自立した生活が困難になっている人の状態」(三宅貴夫)

認知症の症状

  • 〔中核症状〕神経細胞の障害によっておこる症状です(固定的、持続的)記憶障害新しことを覚えられない。以前のことを思い出せない。初期では、数日前の事が想い出せなくなります。やがて数分前のことも忘れてしまうようになります。一方で昔の事、例えば若いころの出来事やしごとで覚えた専門知識などはよく覚えています。逆行性健忘といわれています。
  • 〔見当識障害〕いつ(時)、どこ(場所)、だれ(人)がわからなくなる症状です。認知症の症状は、記憶障害だけではありません。「今日は何月何日だ」「あそこの角を曲がれば自分の家が見える」など、普段は当たり前に認識している時間や場所の感覚が薄れてゆきます。今日の日付や曜日、時間がわからなくなることがおおいようです。
    次に分からなくなるのが自分のいる場所です。近所の店で買い物をして帰り道がわからなくなったり、自分の家の住所が言えなくなったりします。
    このように「いつ」「どこ」がきちんと認識できなくなる状態が「見当識障害」です。
  • 〔実効性機能障害〕計画を立てる、順序立てることができない
    認知症が進むと、思考力、判断力、理解力が低下していきます。
    例えば、それまでなんとなくやっていた料理も難しくなります。カレーライスを作るためには、どんな材料をそろえるか。材料をどのくらい大きさに切るか、何から炒めるか、味見をした時の足りない調味料は何か、など、判断の連続の作業が難しくなるのです。
    • 〔失語〕言葉が出なくなる。
    • 〔失行〕ものの使い方が分からない。
    • 〔失認〕対象を認知することができない。

周辺症状(随伴精神症状)、BPSD(行動・心理症状)
記憶障害や見当識障害などには脳の神経組織の障害によっておこり、認知症の人全員に現われるので「中核症状」と呼ばれています。認知症には、このほか、周囲との関わりで起こる「周辺症状」と呼ばれる症状があり、認知症の人のおよそ80パーセントに現われるといわれています、

  • 〔妄想〕
    現実には起きていないことを信じて疑わないのが妄想です。
    多くみられる物盗られ妄想なども、自分が財布を置いた場所を忘れたという記憶障害がベースになった妄想だと考えられます。
  • 〔徘徊〕
    目的もなく歩き回るのが「徘徊」です。
    ただし、多くの場合。本人なりの理由はあるといわれています。「昔住んでいた家を訪ねたい」と思って家を出たのかもしれません。
  • 〔幻覚(幻視、幻聴)〕
    実際にはないものが見える・聞こえると言う。
    認知症の種類によっては、物忘れよりも先に幻視が現われることもあります。
  • 〔夜間せん妄〕
    突然騒いだり、ものを投げたり、歩き回ったりします。夜中に急に騒ぎ出すことが多い。
  • 〔焦燥〕
    いらいらして落着かない。
  • 〔過食〕目の前にあるものはなんでも食べてしまう。
  • 〔異食〕食べ物以外のものを口に入れる。

その他、不眠、抑鬱状態、攻撃的言動、介護への対抗など

 
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