こんな本に出会いました

介護部門施設長 相原あや子

漫画「君たちはどう生きるか」 原作・吉野源三郎 漫画・羽賀翔一
この本の原作は80年前に出版されています。漫画として出版されたのは昨年のことです。
私の孫の一人が、後数年で思春期を迎えます。少し寡黙な子供で、多感な時期をどう乗り越えるのかなぁ、とそんな想いを漠然としている時、この本の存在を知りました。ともかく読んでみよう。

主人公は中学生のコペル君とコペル君の母方の叔父さんです。コペル君のお父さんは早くに亡くなりました。その病床でお父さんはコペル君の叔父さんに息子のことを託すのです。「息子を人間として、立派に育ててほしい」「分かりました、編集者としてそんな本を書きます」と約束しました。

ある日、コペル君と叔父さんは銀座にあるデパートの屋上から下を見下ろしていました。通る人みんなちっぽけです。その時コペル君は、「人間は、世の中を構成している分子なのかも、もちろん自分も」という想いになったのです。叔父さんはコペル君に伝えます。「コペルニクスのように、自分たちの地球が広い宇宙の中の天体の一つとして、その中を動いていると考えるか、それとも、自分たちの地球が宇宙の中心にどっかりと座りこんでいると考えるか、この二つの考え方というものは、実は、天文学ばかりのことではない。世の中とか、人生とかを考えるときにも、やっぱり、ついてまわることなのだ。」「今日、君がしみじみと、自分を広い広い世の中の一分子だと感じたということは、ほんとうに大きなことなのだと、僕は思う。僕は、君の心の中に、今日の経験が深く痕を残してくれることを、ひそかに願っている。今日君が感じたこと、今日君が考えた考え方は、どうして、なかなか深い意味をもっているのだ。それは、天動説から地動説に変わったようなものだから。」

すでにお解かりのように、コペル君の名前はコペルニクスからきているもので、名付け親は叔父さんです。

この本の中には、貧困・いじめ・友情・裏切り、又、勇気・決断力・意志の強さなど、様々なテーマが盛り込まれています。

コペル君は、友達がいじめられる時、助けるからと約束します。でもその場面で、助けに入る勇気がなく、逃げてしまいます。コペル君は自分の裏切り、勇気のなさを攻めて学校に行けなくなります。叔父さんはコペル君にこのような言葉を投げかけます。
「僕たちは人間として生きてゆく途中で、子供は子供なりに、また大人は大人なりに、いろいろ悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会う。もちろん、それは誰にとっても、決して望ましいことではない。しかし、こうして悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会うおかげで、僕たちは、本来人間がどういうものであるか、ということを知るんだ。」「僕たちが、悔恨の思いに打たれるというのは、自分はそうでなく行動することもできたのに・・・、と考えるからだ。それだけの能力が自分にあったのに・・・、と考えるからだ。正しい理性の声に従って行動するだけの力が、もし僕たちにないのだったら、なんで悔恨の苦しみなんか味わうことがあろう。自分の過ちを認めることはつらい。しかし過ちをつらく感じるということの中に、人間の立派さもあるんだ。」
「僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。だから誤りを犯すこともある。
しかし・・・僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。だから、謝りから立ち直ることもできるのだ。」

ここまで、本の抜粋を中心に書かせていただきました。当初、孫のことを想って読み始めたのですが、イヤイヤ待てよ、人生の終盤に差しかかっている私が、今まで生きてきた過程で、いかに人として大切な落し物をしてきたか、そのことに気付かされました。
これから、長い人生を歩む若い人たちはもちろんですが、どの年代の人が読んでも、人生の拾いものができる一冊だと思います。私たちはこれからどう生きればいいのか、コペル君と共に歩んでいきたいものです。

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