感染性胃腸炎(食中毒、嘔吐下痢)
感染性胃腸炎(食中毒、嘔吐下痢)
感染性胃腸炎(食中毒)は細菌、ウイルスなどの感染性病原体による嘔吐、下痢、発熱を主症状とした感染症の総称です。
病原体に汚染された飲食物や患者の嘔吐物、便なども感染の原因となります。
食品の保存法、調理法、患者の排泄物の処置や換気にも注意が必要です。
うがい手洗いをしっかり行い、患者とタオルの共用は避けることが必要です。
詳細は以下の各表も御参照ください。
購入 | ・肉、魚、野菜などは新鮮なものを買う |
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・表示のある食品は消費期限を確認する | |
保存 | ・すぐに冷蔵庫に入れる。詰めすぎると冷えない |
・冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下に | |
下準備 | ・手を洗う。生の肉、魚、卵を扱ったら、また手を洗う |
・生の肉や魚を切ったら包丁・まな板を洗い、熱湯消毒 | |
・解凍は冷蔵庫内か電子レンジで行い、すぐ調理する | |
調理 | ・使い終わった用具は洗って片づけ、手を洗う |
・加熱は十分に行う(中心部が85℃で1分間以上) | |
・料理を途中でやめる時は冷蔵庫に入れる | |
・肉を焼く時の取り箸などは専用にして口に入れない。 | |
食事 | ・食卓につく前に手を洗う |
・清潔な手と器具で、清潔な容器に盛り付ける | |
・トリ刺し、レバ刺し、ユッケなどの生肉料理は避ける | |
・食品や料理を室温で長く放置しない | |
残った食品 | ・手を洗ってから、きれいな容器に小分けして冷やす |
・温め直す時も十分に加熱する。スープは沸騰させる | |
・時間がたったもの、怪しいと思ったものは捨てる |
原因 | 特徴 | 原因食品 の例 |
主な症状 | 潜伏期間 | 予防策 |
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サルモネラ属菌 | 食肉と卵をしばしば汚染。家畜・鳥・カメなどが保菌 | 食肉、卵、卵の加工品 | 激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐 | 6~72時間 | 肉、玉は十分加熱する。生卵は新鮮なものに限る。 |
カンピロパクター | 鶏や家畜の腸にいる。水を介した感染も多い | 鶏肉、生野菜、牛乳など | 発熱、だるさ、吐き気、頭痛、下痢 | 1~7日 | 調理器具の消毒と乾燥。食肉は十分加熱する |
腸炎ビブリオ | 海産の魚介類につく。真水や酸には弱い | 刺し身、すし | 腹痛、水様下痢、発熱、嘔吐 | 8~24時間 | 魚介類は真水でよく洗う。冷蔵庫に保存する |
黄色ブドウ球菌 | 人の鼻などに常在する。熱に強い毒素を出す | おにぎり、弁当 | 嘔吐、腹痛、下痢 | 1~3時間 | 傷や肌荒れのある手で食品に触れない |
腸管出血性 大腸菌 |
O157,O26など。牛などの腸にいる。少量でも感染 | 牛レバー刺し、ハンバーグ、サラダ、井戸水 | 激しい腹痛、血便。尿毒症を起こすと死亡も | 1~10日 | 肉の中心部まで加熱する。生野菜はよく洗う |
ウェルシュ菌 | 酸素のない所で増え、熱に強い芽胞を作る。腸で増えて毒素を出す | カレー、スープ、煮物 | 下痢、腹痛 | 8~12時間 | 調理後速やかに食べる。保存する時はすばやく冷却する。再加熱は十分に行う |
セレウス菌 | 増殖期に毒素を作る。毒素は熱で壊れるが、芽胞は加熱しても生き残る | 焼き飯、パスタ | 嘔吐型(毒素) | 30分~3時間 | 焼き飯や麺類を作り置きしない。保存する時は、冷蔵庫に入れる |
肉、野菜など | 下痢型(腸内増殖) | 8~16時間 | |||
ボツリニス菌 | 熱に強い芽胞を作り、酸素のない所で増える。強力な神経毒を出す | 缶詰、瓶詰、真空パック食品、いずしなど | 嘔吐、脱力感、視力障害、呼吸困難 | 8~36時間 | 容器が膨張している缶詰や真空パック食品は食べない |
エルシニア | 低温でも増える。豚やネズミなどが保菌 | 主に食肉 | 発熱、腹痛、下痢 | 2~3日 | 食肉は十分加熱する。冷蔵庫を過信しない |
リステリア | 低温でも増殖。欧米で多い | 生乳、チーズ | 発熱、だるさ | 1日~数週間 | 未殺菌の乳類に注意 |
ノロウイルス | 人一人感染が多く、調理者が介したら汚染が増加 | カキ、サンドイッチなど | 嘔吐、下痢、腹痛 | 24~48時間 | カイは中心部まで加熱。野菜はよく洗う。手洗いの徹底 |
A型肝炎ウイルス | アジアに多い | 魚介類、水 | 発熱、黄だん | 3~4週間 | 食材は十分加熱する |
E型肝炎ウイルス | 肉の生食による感染が多い | イノシシ・鹿・豚の肉やレバー | 発熱、黄だん | 2~9週間 | 肉類は十分加熱する。不衛生な水も注意 |
ヒスタミン | 赤身の魚の鮮度が落ちると細菌の作用でヒスタミンが生じ、じんましん・口の周りの紅潮・頭痛などが起きる。熱で分解しない | マグロ、カツオ、ブリ、サバ、サンマなどを室温で放置しない |
寄生虫 | アニサキス(サバ・イカなどの海産魚介類)、顎口虫・横川吸虫・肝吸虫(アユなど淡水魚)、肺吸虫(淡水ガニ・イノシシ肉)、旋尾線虫(生ホタルイカ)、 旋毛虫(熊肉・輸入豚肉)など |
寄生虫は加熱で死ぬ。生食する時はアニサキスを取る。淡水の魚介類、豚肉や野生獣の肉は加熱する。ホタルイカは、生食しない |
原虫 | クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、ジアルジアなど | 汚染された水や食品で加熱する |
魚類の毒 | フグ毒(テトロドトキシン。特に肝臓・卵巣)、シガテラ毒(オニカマス・ドクウツボ・イシガキダイなど)、パリトキシン(アオブダイ) | フグは素人で料理しない。サンゴ礁系の魚は要注意。毒は熱で壊れず、味もない |
貝毒 | アサリ、カキ、ホタテなど二枚貝。まひ型と下痢型がある | 毒は熱で壊れず味もない。行政情報に注意 |
植物毒 | ジャガイモの芽・緑色の皮、アジサイの葉、スイセン、ドクゼリ、バイケイソウ、青梅の種子など多数。海藻ではオゴノリ | 見分けのついた食用の植物以外食べない。園芸植物にも有毒のものは多い |
毒キノコ | クサウラベニタケ、ツキヨタケ、カキシメジなど多数 | 確実に種類のわかったもの意外食べない |
カビ毒 | アフラトキシン(ナッツ類・ナツメグ)、オクラトキシンA・フザリウムキシン(穀類など)、パツリン(リンゴ)など | 毒性、発がん性の強いものがあり、カビは口に入れない。輸入食品はよく観察する |
化学物質・重金属 | 農薬、殺菌剤、洗浄剤、ダイオキシン類(カミネ油症事件)、ヒ素(森永ヒ素ミルク事件)、有機水銀(水俣病)、カドミウム(イタイイタイ病)、スズ(酸性食品のブリキ缶詰を開けて放置すると溶出)、鉛など |